平成11年に発行された30周年記念誌
澤田株式会社 Vol.3 みんなを繋ぐ、みんなで繋ぐ。
西日本の繊維産業の町、泉大津市。ここから国内外へ、ユニークさと使いやすさを備えたニット原糸をお届けしている澤田株式会社。糸だけでなく、自社ブランドでの製品づくりまでトータルで手がける澤田株式会社の設立から、ものづくりにかける想いなど、澤田 隆生会長、澤田 誠社長とBLUEKNIT storeのクリエイティブディレクターを務める梶原加奈子さんとの対談の模様をお届けします
分野を超えた製品開発、人と人との繋がりを大切にする強い想い。新しいことに挑戦する原動力とは何か。前編、中編、後編の3部に分けてお届けします。
後編の今回は、会社を長く続けるための秘訣や、日本のものづくりが抱える問題、BLUEKNITに期待していることについてお話を伺っていきます。
左:BLUEKNIT store クリエイティブディレクター 梶原加奈子
右:澤田株式会社 澤田誠社長
時代の変化と共にものづくりはリンクしていく。
【梶原】
会社を長く続けるための秘訣などありますか?
【澤田社長】
時代に柔軟に次々と手を打っていくことがうちの強みですね。
元々うちの工場の編み立て室は、全て編み地づくり専用でやっていました。最近は社内に編み地づくりを専門で置いているところは少なくて、外注に出したりしています。編み地は無料でカットしてお客様に出してきましたが、国内生産が減って糸を買っていただける量も減ってきました。そんな中でコロナがきて、マスクの生産が全国的に増えたじゃないですか。そこで編み地づくりのノウハウを持っている私たちはマスクの生産を始めました。
オリジナルマスク生産の様子
【澤田社長】
元々ホールガーメントミニの編機が工場にあって、追加で2台導入して生産を増やしました。 コロナの影響でアパレルの企画もなく、編み地づくりの生産が減ったところにマスクの生産が増えたので、大分補えました。作り手の仕事にもなって、おまけに売上も上がって。これがきっかけで今は編み地づくりと自社ブランドの小物やマスク生産の両立ができています。これは結果オーライで、色々な依頼に柔軟に合わせていたからこそできました。コロナの副産物ですね。
澤田株式会社の試作編み地ハンガー
若い人へのメッセージ
自分の仕事に誇りを持つこと。
【梶原】
若い社員に伝えたいことなどありますか?
【澤田社長】
自分達の仕事に誇りを持つことが良いものづくりに繋がると思いますし、会社の価値にも繋がると思います。やっぱりニット業界は面白いけど、今の繊維業界、ファッション業界は少し元気が無い気がします。だからこそ一人一人が仕事に自信を持つこと。それがお客様に良いものを提供することに繋がるはずです。
大阪・泉大津の自社工場
作り手も使い手も、みんなで繋いでいく。
【梶原】
今後の課題などお聞かせください。
【澤田社長】
若い人に来てもらって、会社を継続し、どんなふうに引き継いでもらえるかだと思います。 どうやって10年、20年続けていくか。編み機を売る工場、糸を作る工場、製品を作る工場・・・みんな運命共同体だと思うんです。そのために同じ業界のみんなで人材育成をして繋いでいくことが大事ですね。
今回 BLUEKNIT の立ち上げも、未来を守るという思いがあって島製機製作所さんが立ち上げてくれました。次世代育成、地産地消とか色んな意味合いがサステナブルに含まれています。このプラットフォームが広がり続けていくことも、1つの課題ですね。
大阪・泉大津の自社工場
BLUEKNIT に期待していること
【梶原】
最後に、今後の目標や BLUEKNIT に期待することについて教えてください。
【澤田社長】
やっぱり私たちは”原糸事業”と”製品OEM事業”と”自社ブランド”の三つを両立していくこと。ニット中心は変わらないんですけど、いつか並行して進めていきたいなと思っています。自社販売の売れ行きを見るとお客様の反応もわかりやすいですね。これは売れる、売れないなど、OEMや糸の開発にも活かせるので、全ては繋がっていくと思います。
澤田株式会社の糸ブック
澤田株式会社の試作編み地ハンガー
【澤田社長】
BLUEKNIT の立ち上げに参加させて頂いたのも、OEMと原糸だけでは中々声かけてもらえなかったと思うんですよ。声をかけてもらえること自体が自社製品事業をしていた一つの成果だと思うんです。皆さんとの連携とか、共感してくれる人を増やすとか、あとは売っていく力をつけるとか。伝えることと売ることの両方ができればと思っています。
澤田株式会社 澤田誠社長
梶原加奈子ディレクターの取材を終えて。
澤田さんの糸は以前からニットのデザインをするときに使用していたので、とても親しみがある感覚で大阪本社を訪問しました。今回初めて澤田隆生会長、澤田誠社長と対談し、澤田さんがグローバルに活躍していることや製品事業を長年続けてきたことを初めて伺いました。やはり魅力的な糸を作る背景に、あらゆる挑戦に向き合ってきた魂があり、その熱意が受け継がれていることを知りました。糸販売、OEM、ブランド運営と3つの視点を繋げて柔軟に成長している澤田さんだからこそ、素敵な企画を生み出しているのだと思います。
原点にあるのは澤田会長の志。創業のときから「人を創る、夢を創る」という想い。 人間としてこの世に生を受け、幸せを感じながら一生を過ごす中で、人との出会い程思いの深いものはないでしょう。という言葉が30周年記念誌に書かれています。
常に前を向いて人との繋がりを大切にしながら、努力を重ねてきた創業の精神が澤田社長にも受け継がれ、社員自らが作りあげた自社ブランドを運営するSAWADA MARCHEがスタートし、コロナの危機でもホールガーメントミニの編機を活用してマスク販売を成長させたのだろうと思います。
大阪の自社工場を見学すると、若い働き手の方達が編機を動かしていました。その手に持つ商品は どれも工夫されている商品が多く、思わず触れたくなる編み地があり、ワクワクしました。難しいことや新しいことの試験開発が澤田さんの工場に集まっているのだろうと思います。
BLUEKNIT に参加しているmarusawaのデザイナーである坂本さんチームと話していても、 どこにもない商品を作りたい、カラフルな色合いで楽しくなるものを作りたい。という考えを伺い、 その気合いと夢を語る心と社員一人一人の想いを発信できる自由さがあるからこそが、澤田さんの可能性を広げていくのだろうと思います。
BLUEKNIT もこれからの澤田さんのサステナブル製品開発を応援し、発信に向けた挑戦を様々な面でサポートしていけるように頑張りたいと思います。
大阪工場で開発していた立体的な編み地
次回、「有限会社佐藤ニット 前編 家族で支える東京のニット工場」を読む。
BLUEKNIT store クリエイティブディレクター
梶原 加奈子
北海道札幌市生まれ。多摩美術大学デザイン学部染織科卒業。
(株)イッセイミヤケテキスタイル企画を経て渡英。英国王立芸術大学院(RCA)ファッション&テキスタイルデザイン修士課程修了。2008年 KAJIHARA DESIGN STUDIO INC.を設立。
日本産地の素材を集結させたテキスタイルブランド KANA COLLECTION を立ち上げ、海外のハイメゾン向けに素材を提案。クリエイティブディレクターとしてもブランディングや地域活性化と連携。札幌の森にショップ、ダイニング、ゲストハウスの複合施設「COQ」を立ち上げ、自然と共に過ごすサーキュラーライフバランスを発信している。
2022年より(株)島精機製作所が立ち上げたサステナブルECモール「BLUEKNIT store」のクリエイティブディレクターを務めている。
北海道札幌市生まれ。多摩美術大学デザイン学部染織科卒業。
(株)イッセイミヤケテキスタイル企画を経て渡英。英国王立芸術大学院(RCA)ファッション&テキスタイルデザイン修士課程修了。2008年 KAJIHARA DESIGN STUDIO INC.を設立。
日本産地の素材を集結させたテキスタイルブランド KANA COLLECTION を立ち上げ、海外の廃メゾン向けに素材を提案。クリエイティブディレクターとしてもブランディングや地域活性化と連携。札幌の森にショップ、ダイニング、ゲストハウスの複合施設「COQ」を立ち上げ、自然と共に過ごすサーキュラーライフバランスを発信している。
2022年より(株)島精機製作所が立ち上げたサステナブルECモール「BLUEKNIT store」のクリエイティブディレクターを務めている。