BLUEKNITでは販売したニット製品の買戻しを行い、リセールによるリユースやマテリアルリサイクルを推進していますが、先日マテリアルリサイクルパートナーである東谷商店様が導入しているウール反毛機を見学する機会がありました。
東谷商店様は関西国際空港に近い、大阪府泉佐野市で60年以上前から故繊維回収業を営まれており、現在の代表取締役社長である、東谷正隆様は同社の3代目になります。
代表の東谷様
回収された繊維製品にはさまざまな素材のものが含まれますが、これらは主に素材別に分別され、更に先のリサイクル業者やリセール業者に販売されていきます。
現在、東谷商店様では単に故繊維の回収、分別だけではなく、再販可能な商品のリセールや、大学とのアップサイクル協業の他、ウール製品の反毛から反毛糸を使った自社ブランド製品開発、販売まで幅広く活動されており、さまざまなメディアでも紹介されています。
ウール反毛では愛知県尾州地区が有名で、「毛七」と呼ばれる、ウール混率70%程度の再生素材が昔から流通しています。反毛すると繊維長が短くなるので、それを補うために20~30%程度の化学繊維を追加し、混紡することが一般的となっています。再生に利用されるニット製品や残糸などはウール混率80%以上が必要となるため、70%の混率を保つ為には、何度も再生プロセスをループさせることはできません。
東谷商店様ではウール100%の製品だけを選別回収し、縫製糸などを丁寧に取り除いて反毛し、リサイクルウール100%の糸を作る事業を行っており、自社ブランドである「TONITO」はこれらを使ったブランケットなどの製品を展開しています。
リサイクルウールを使用した自社ブランド製品
同社でのウール反毛のプロセスは以下の通り。
- ①回収したニット製品でウール 100% ものだけを抽出し、色別に分ける。
- ②縫い目の部分やジッパー、ボタンなど異素材の部分を除去する。
- ③裁断機である程度の大きさに裁断する。
- ④繊維が解きほどかれやすくするために、オイルをしみこませる。
- ⑤ラグホッパー機に生地を投入し、ラグマシンで粗分解する。
- ⑥均一に繊維まで解かれているか確認し、ダマが残っている様であれば⑤を繰り返す。
- ⑦ホッパー機に⑥で出来た綿を投入すると、接続されたガーネット機で反毛され綿が排出される。
- ⑧ここでもダマや不均一性がないかを確認し、問題なければ圧縮機でプレスしパッキング。
- ⑨外部の紡績会社で糸に紡績する。
100%ウール素材の同系色のセーターだけを集める。
縫い目の部分やジッパー、ボタンなど異素材の部分を除去する。この工程での丁寧な作業が最終のクオリティに大きく影響。
裁断機である程度の大きさに裁断する。小さすぎると繊維が短くなりすぎるので注意。
ラグホッパー機に生地を投入し、連動するラグマシンで粗分解する。
均一に繊維まで解かれているか確認する。
年季の入った反毛機。メーカーは廃業しているが保守修理を請け負ってくれる業者と契約。
ホッパー機にラグマシンで出来た綿を投入すると、接続されたガーネット機で反毛され綿が排出される。
排出される綿のクオリティを確認。上流工程の丁寧な作業のお陰で、ダマのない綿に。
BLUEKNITが取り扱う商品は、天然素材使用のものが多く、特に秋冬物はウール素材が多く使われていますので、BLUEKNITで買戻したニット製品を利用して、高品位なニット用ウール糸に再生していただく予定です。
一般回収されたニット製品からではありますが、既に100%リサイクルウールのサンプル糸(15番双糸)を島精機製作所の横編機でテスト編成し、7ゲージ風合いであれば問題なく生産できることを確認しています。
島精機製作所の横編機で編成したサンプルスワッチ
将来的にはこのウール糸を使った製品をBLUEKNITに参加するニットメーカー様にご使用いただき、オリジナル商品として販売することで、ウールの完全リサイクルループを何度も回すことができるようになることを期待しています。
株式会社 東谷商店は60年以上続く故繊維業。
関西を中心に廃棄衣類の回収、最近ではアパレル回収の受け入れを行い、主に国内外リユース、ウエス材、反毛材などに選別しています。
近年、リサイクル素材の開発や自社ブランド「TONITO」の運営など、サーキュラーエコノミーを推進しています。
2024年に自社に反毛機を導入し、大阪泉州地域の紡績工場などと連携し、ウールリサイクルの産地化を目指しています。