八王子産地でコミュニティを作り上げる
織物の街、東京都八王子市にニット工場を構える有限会社佐藤ニット。ご家族3人で経営する体制は、ものづくりしたい人に寄り添い、ひとりひとりに対応する少数精鋭の強みを持っています。今回はそんな優しさと強さを兼ね備えた有限会社佐藤ニットの社長の佐藤 祐幸さん、敦彦さん、理恵さんとBLUEKNIT storeのクリエイティブディレクターを務める梶原加奈子さんとの対談の模様をお届けします。後編では、今後の目標やサステイナブル、BLUEKNITに期待することについて伺っていきます。
BLUEKNIT storeのクリエイティブディレクター 梶原加奈子
【梶原】
今後の目標や課題について、聞かせてください。
【理恵さん】
今後は自分たちで作るモノだけではなく、少量生産でもデザイナーさんやモノづくりをしたい人たちと一緒に面白いものを作りたいと考えています。我々は体験の場を提供して、新しいアイデアをもらって販売したいと思っています。
【敦彦さん】
その例として最近は学生さんの卒業制作で1着作りました。ミラノの学校に通っている学生さんでしたが、コロナでイタリアに行けないのでせっかくだから日本の技術を使ったものを作りたいという話を頂いて制作しました。八王子から学生さんを送るインターンシップ制度もあり、利用しています。いろんな方とものづくりをしたいですね。
取材対応してくださった 佐藤社長の息子さんの敦彦さん
【梶原】
八王子はデザイナーが多く、一緒にものづくりに取り組んで成長するイメージがありますね。
【理恵さん】
最近は藍染屋さんと一緒にコラボレーションした商品も作りました。ダブルネームみたいに関わった人の名前を一緒に打ち出したいと思っています。徐々に増やしていきたいので、近くの美術大学にも応募してもらう計画です。今年からこのような活動に力を入れています。若い方が集まる地域作りをしたいと思っています。
©工藤花観
サステイナブルな意識から人材育成までできる場として
【梶原】
佐藤ニットさんで理恵さんが取り組んでいるオリジナルブランド〈つかいきる課〉がありますが、サステイナブルに対してどのような活動をしていますか?
【理恵さん】
〈つかいきる課〉はインターンシップの制度で来た学生さんと一緒に始めました。実はコロナが流行してしまった時にお父さんが既に残糸で靴下を作っていました。コロナで仕事が減った内職さんに仕事を回すためにお父さんが作った仕事です。その靴下をどのように販売するか、学生さんと話し合い、今後はこの靴下ように残糸を使い切ることが重要だという結論に達しました。普段の仕事で少量の生産でも、どうしても糸が残る場合があるんです。その糸でサンプルを編んだりしていましたが、最後まで人の役に立つことを目標として「つかいきる」をテーマに残糸を新しい姿に作り替えるブランドとして立ち上げました。
【理恵さん】
つかいきる課の靴下は工場で生産するほどの数ではないですが、地道に作っています。洗うと縮んでしまうなど課題がまだあるので、クリアできたらBLUEKNITで販売したいと考えています。
自社のオリジナルブランド〈つかいきる課〉の靴下
【梶原】
手洗いやドライクリーニングなど、お手入れの方法も丁寧に伝えていきたいですね。 今後BLUEKNIT で期待することはありますでしょうか?
【理恵さん】
学生さんとコラボレーションした〈つかいきる課〉の商品をよりたくさんの人に見てもらいたいですね。商品を出品したら、学生さんの発表の場でもあると思いますので。BLUEKNIT はコミュニティの場でもあり、人材交流もできたらと思っています。最近は授業でサステイナルについて学ぶことも多いようで、意識が高くなっていると感じます。このようなサステイナブル意識も忘れずにやっていきたいですね。
自宅兼工場の前にいた鯉
梶原加奈子ディレクターの取材を終えて
八王子産地は昔からデザイナーがモノづくりに参加しやすく、クリエイションに理解がある 工場さんが多い印象です。その中で、佐藤ニットさんも若者とのコラボや産学連携に積極的な 工場さんだと思いました。様々なデザイナーさん達とウールガーゼの縮絨技術を長年積み重ねてきたことで、新しい考えを融合しながらオリジナリティを追求してきたのだろうと思います。 家族経営でお互いの役割を尊重し理解しながら育ってきた環境も、穏やかで優しい佐藤ニットさんの服を生み出したのだろうと思います。
薄くて軽くて、ナチュラルな凹凸感があるテクスチャー。他のどこにもない佐藤ニットさんのウールニットに一度触れて着てみたら、きっと着心地がよくてファンになるだろうと思います。 何度も着たいと思う服を長く着られるように、ウールのお手入れ方法も佐藤ニットさんがアドバイスしてくれます。モノづくりが大好きな佐藤家の皆さんは穏やかでお話していても心地良く、商品の存在となんだか似ています。
工場には常に残糸が残りますが、それを集めて使いきる企画が服となり、BLUEKNITでも販売をしています。「つかいきる課」というユニークなブランド名も覚えやすくて伝わりやすいですね。佐藤ニットさんのサステナブル活動やクリエータープラットフォームとなる動きを応援し、BLUEKNITからも発信をサポートしていきたいと思います。
佐藤ニット読みもの 残糸のおはなし「つかいきる課」を読む。
BLUEKNIT storeクリエイティブディレクター
梶原 加奈子
北海道札幌市生まれ。多摩美術大学デザイン学部染織科卒業。
(株)イッセイミヤケテキスタイル企画を経て渡英。英国王立芸術大学院(RCA)ファッション&テキスタイルデザイン修士課程修了。2008年KAJIHARA DESIGN STUDIO INC.を設立。
日本産地の素材を集結させたテキスタイルブランドKANA COLLECTIONを立ち上げ、海外のハイメゾン向けに素材を提案。クリエイティブディレクターとしてもブランディングや地域活性化と連携。札幌の森にショップ、ダイニング、ゲストハウスの複合施設「COQ」を立ち上げ、自然と共に過ごすサーキュラーライフバランスを発信している。
2022年より(株)島精機製作所が立ち上げたサステナブルECモール「BLUEKNIT store」のクリエイティブディレクターを務めている。
北海道札幌市生まれ。多摩美術大学デザイン学部染織科卒業。
(株)イッセイミヤケテキスタイル企画を経て渡英。英国王立芸術大学院(RCA)ファッション&テキスタイルデザイン修士課程修了。2008年KAJIHARA DESIGN STUDIO INC.を設立。
日本産地の素材を集結させたテキスタイルブランド KANA COLLECTION を立ち上げ、海外の廃メゾン向けに素材を提案。クリエイティブディレクターとしてもブランディングや地域活性化と連携。札幌の森にショップ、ダイニング、ゲストハウスの複合施設「COQ」を立ち上げ、自然と共に過ごすサーキュラーライフバランスを発信している。
2022年より(株)島精機製作所が立ち上げたサステナブルECモール「BLUEKNIT store」のクリエイティブディレクターを務めている。