有限会社佐藤ニット 中編 軽くて暖かいニットを求めて

有限会社佐藤ニット 中編。軽くて暖かいニットを求めて。

軽くて暖かいニットを求めて。

織物の街、東京都八王子市にニット工場を構える有限会社佐藤ニット。ご家族4人で経営する体制は、ものづくりしたい人に寄り添い、ひとりひとりに対応する少数精鋭の強みを持っています。今回はそんな優しさと強さを兼ね備えた有限会社佐藤ニットの社長の佐藤 祐幸さん、敦彦さん、理恵さんとBLUEKNIT storeのクリエイティブディレクターを務める梶原加奈子さんとの対談の模様をお届けします。中編では、佐藤ニットさんの特徴や柔軟に対応する姿勢についてお話を伺っていきます。

左から息子さんの佐藤敦彦さん、代表取締役の佐藤祐幸さん、娘さんの佐藤理恵さん

左:代表取締役の佐藤 祐幸さん 右:息子さんの敦彦さん

BLUEKNIT storeのクリエイティブディレクター 梶原加奈子

BLUEKNIT storeのクリエイティブディレクター 梶原加奈子

【梶原】

御社のモノづくりの技術と特徴は何でしょうか?

【敦彦さん】

現在はホールガーメントの機械で12ゲージのニットを作っていますが、今後は8ゲージも入れようと考えています。弊社は軽さと暖かさを求めて、普通より半分程度の糸を使い凝縮をかけてニットを作っています。縮絨の加工も自社でやっていますね。

ニット衣服

【敦彦さん】

昔、八王子は分業体制の産地でした。弊社も最初の頃は編むだけの仕事をやっていましたが、だんだん周りが廃業していくにつれアイロン台を投入したり、ミシンを入れたりと、編機を増やすよりも設備を増やして下請けのみならず一貫して行う工場になってきました。

工場内の様子

【梶原】

確かにここ一年間感じたことは、分業化していた産地より一貫して生産している工場さんが活躍するようになってきましたね。

【敦彦さん】

そうですね。周りに辞める工場さんが増えてきて、いつの間にか東京には工場が少なくなってしまいました。元々はポロシャツの襟を作るなど付属編みをメインにしていましたが、ホールガーメント機械の導入で無縫製ニットをつくる会社になりました。

ホールガーメントの編機から製品が編まれて出てくる様子

ホールガーメントの編機から製品が編まれて出てくる様子

【梶原】

御社のニットの特徴は軽さですよね。元々軽いニットが好きで作ろうとしていましたか? 12ゲージだとそれほど薄くないニットだと思いますが、御社の商品は本当に軽くてびっくりしました。ガーゼのように編んで縮めている効果でしょうか。

【敦彦さん】

軽いニットは好きです。生地を縮ませる縮絨という技術で様々な試行錯誤を重ねています。縮み率を調整したり、オイルで洗ってみたり。ウールは縮みやすいので、長く楽しんで頂けるよう手洗いなどお手入れの方法もセットで説明して販売することが大事だと考えています。

【梶原】

同じようなクオリティーを保ちながら、モノづくりをすることは本当に大変なことだと思いますが、やっぱり研究開発に熱心ですね。御社がモノづくりにおいて一番大切にしていることはありますか?

【敦彦さん】

お断りしない精神を大事にしています。あと、自分たちが得意としている部分を活かすことですね。やっぱり自分たちの特徴を出していかないと生き残れないと思います。

ニット衣服

多様なモノづくりと自社の強みを生かすことが重要。

【梶原】

自分たちで作り、自分たちで売る考えにシフトしたのは良いことだと思います。長くお付き合いしている販売先があると伺っていますが、どんなところですか?

【敦彦さん】

私の姉が新潟に住むことになり、そのつながりで地方の産地応援をしているショップと知り合うことができました。そこで販売を始めてから20年近くになります。お客様の反応が分かるので、服の改良を重ねやすいですね。

対談の様子

【梶原】

お客様の反応が身近に感じられるのはいいですね。工場は何人で経営されているんですか?

【佐藤社長】

すべて家族だけでやっています。基本4人で出来る範囲で、無理がないようにしていますね。それでもやってみないと分からないこともあるので、依頼があったらできるだけ断らないようにしています。とりあえずスタートしてみて、やりながら判断します。

佐藤社長

【梶原】

断らないけど、できる範囲までやるという感覚ですね。あまりこのような感覚をもっている会社は少ないかと思います。この仕事を長く続けることができた秘訣は何でしょうか?

【佐藤社長】

弊社は大量生産が出来ないんです。大量生産がもし出来たとしても続けていける保証はないことを長年この業界にいると気づきます。ある意味、家族と出来る範囲のことを柔軟に続けてきたことが秘訣でしょうか。

工場の様子

効率性より発想力を大事に。

【梶原】

時代の変化に応じていろんなお客様とつながりながら、上手く時代性を取り入れて適応力が身に付いたんですね。良好な関係で依頼された仕事と向き合う姿勢は良いですね。

【敦彦さん】

そうですね。一生懸命に営業をして仕事をとり、キャパオーバーした時期があったので反省しました。笑

敦彦さん

【梶原】

佐藤ニットさんのホールガーメントの服は、今までみた中で一番ナチュラルさを感じます。難しい工程も人の手を加えながら続けていて、他とは違う、優しい印象がある服ですね。

【敦彦さん】

工場なのでどうしても効率化を求めてしまうことは当たり前だと思います。編み時間を短くして、沢山作る考え方が本道ですが、我々の方向性とは違っています。例えば、デザイナーさんが工場に来たとき、我々が持っていない発想力があり関心します。その発想力が一番重要だと思いますね。

佐藤社長

中編は以上になります。後編では、今後の目標やサステイナブル、BLUEKNITに期待することについて伺っていきます。

後編へ続く。

BLUEKNIT store クリエイティブディレクター 梶原加奈子(かじはらかなこ)

BLUEKNIT store クリエイティブディレクター

梶原 加奈子

北海道札幌市生まれ。多摩美術大学デザイン学部染織科卒業。

株)ッセイミヤケテキスタイル企画を経て渡英。英国王立芸術大学院RCA)ァッション&テキスタイルデザイン修士課程修了。2008年 KAJIHARA DESIGN STUDIO INC.を設立。

日本産地の素材を集結させたテキスタイルブランド KANA COLLECTION を立ち上げ、海外のハイメゾン向けに素材を提案。クリエイティブディレクターとしてもブランディングや地域活性化と連携。札幌の森にショップ、ダイニング、ゲストハウスの複合施設「COQ」を立ち上げ、自然と共に過ごすサーキュラーライフバランスを発信している。

2022年より株)精機製作所が立ち上げたサステナブルECモール「BLUEKNIT store」のクリエイティブディレクターを務めている。

北海道札幌市生まれ。多摩美術大学デザイン学部染織科卒業。

株)ッセイミヤケテキスタイル企画を経て渡英。英国王立芸術大学院(RCA)ファッション&テキスタイルデザイン修士課程修了。2008年 KAJIHARA DESIGN STUDIO INC.を設立。

日本産地の素材を集結させたテキスタイルブランド KANA COLLECTION を立ち上げ、海外の廃メゾン向けに素材を提案。クリエイティブディレクターとしてもブランディングや地域活性化と連携。札幌の森にショップ、ダイニング、ゲストハウスの複合施設「COQ」を立ち上げ、自然と共に過ごすサーキュラーライフバランスを発信している。

2022年より株)精機製作所が立ち上げたサステナブルECモール「BLUEKNIT store」のクリエイティブディレクターを務めている。

PROFILE

有限会社佐藤ニット

( 有 ) 佐藤ニットは1960年より、東京都八王子市にて手動式編機によるニット生地の製造からスタートしたニット工場です。2002年からは無縫製ニットと呼ばれるホールガーメント機を導入し、縫い目のないニット製品を製造しています。家族で営む小さな工場ですが、糸の巻き上げから仕上げ、梱包まで一貫して大切なセーターをお作りしています。
佐藤ニットについて詳しく【読みもの】家族で支える東京のニット工場

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