島精機製作所 後編 機械は手段であり、あくまでも主役は人である

右側:島三博社長、左側:梶原加奈子

右側:島三博社長、左側:梶原加奈子

【梶原】

これからの社会は、物を持たないシンプルな暮らしへの関心が増えていくと思います。

それゆえに、購入する物を熟考し自分だけの特別感があるサービスやカスタマイズ商品を探していく人たちが増えていくと思います。BLUEKNIT storeではお客様と交流しながら受注生産や予約販売を促進していきたいと思っています。その際、お客様をお待たせ過ぎることが懸念されますが、御社のホールガーメントの機械は無縫製で製品を短納期生産できるため、まさに今の時代のニーズに対応しやすいのではと思います。

【島社長】

ホールガーメントをほめて頂きありがとうございます。しかし、僕の個人的な意見としてはホールガーメントの機械より、作り手の人間性にもっとクローズアップしてほしいと考えています。人が作ることにフォーカスを当てたいですね。あくまでも主役は人であってほしいです。

株式会社島精機製作所 工場での組み立て工程

株式会社島精機製作所 工場での組み立て工程

株式会社島精機製作所 トータルデザインセンター

株式会社島精機製作所 トータルデザインセンター

【梶原】

そうですね。根本的なところに対しての考え方につながる話ですね。社長の好きなブランド又は、尊敬しているアパレルブランドとかありますでしょうか?好きな理由も教えて頂きたいです。

【島社長】

僕は個人的に「Brunello Cucinelli」というブランドが好きです。その理由は、働いている従業員が満足した暮らしを過ごすためにブランドが存在するという哲学に共感しているからです。いわゆる「人間主義経営」に基づいてブランドを運営しています。だから値段が高くても理解できますし、良いものづくりをしていると思います。

彼らは洋服だけではなくアグリビジネスもやっていまして、従業員のために図書館を作り、それが知恵になって洋服を作っています。最終的に商品になってお客様に良いものを提供し、世の中にも還元をする。またそれが地域の利益になり循環する話につながると思います。

このように小さい村が発展していく原動力になるような考え方に共感します。彼らは私たちの機械も使っていますが、機械が主役ではなく人が主役になっています。

【梶原】

今回BLUEKNITに参加する工場さんは、今までアパレルブランドの下に隠れており、あまり前に出ることがなかったと思います。これからBLUEKNITに参加することで、SNSなど発信にも参加し、自分たちの想いを表現してもらいたいと思います。

一緒になって本物を、新しい世界をつくり上げたい。

【島社長】

最初は4社が参加しますが、我々も一緒に作り上げることが重要だと思っています。基本的には本物を一緒に作り続けましょうと、作れる範囲で良いので一般のお客様が喜んでもらうために本物にクリエイティブを伝える。足りない部分は切磋琢磨してどうやって作り上げるか話し合って作っていきたいと思います。そのような輪を作り上げたいと思っております。

【梶原】

今回各工場さんに話を伺ったところ、自社ブランドをやっていきたい気持ちがあるけど現実的な問題として、どうデザインを表現し続けるのか、自分たちで写真を撮影できるか、文章を書いていけるか、不安があると仰っていました。今まで経験してこなかった発信していくための表現をこれから学んでいくことになると思います。

想いを発信する、伝えることの大事さ。

【島社長】

いま、表現の話を聞いて思い出した話があります。この前MITメディアラボチームとお話をする機会がありました。

今まで僕が一番理解できなかった領域がアートの分野でした。アートの世界は本当にわからなったのです。ビジネスとしていろいろ考えている中で、むしろアートがビジネスのヒントになることを知りました。ロジック、適正価格、マーケティングの話などはアートとは関係がないです。理屈になっていないこと、この自体がアートである。そして何かを表現する手段としてアートが必要であることに気が付きました。

人間が自由だと感じる部分、ロジックを超えて表現することがアートですね。その意味が良く分かってきたらモノの見方が変わってきました。

【梶原】

特に未来は、デジタルやロボットとの関わりが増えますので人間の感情が重要視されると思います。感覚を数値化することも求められると思います。

ニット工場さんたちも、自分たちの表現が自由であればある程、悩むと思いますが、それぞれの個性をもっと発揮できるようにサポートしていきたいと思います。

最新型ペットロボット:LOVOTの服をホールガーメントで制作

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島精機製作所 島社長の取材を終えて:梶原加奈子ディレクター

【梶原】

島精機製作所さんのスローガン「世の中にないものをつくれ。ないからつくれ。そして、なくてはならない企業になれ。」の言葉どおり、時代の変化や人々が関心を持っていることを深く考え、前をみて進む島社長の独自の視点を伺うことができました。私は島精機製作所さんの社員さんたちと話し合いながら、参加するニット工場さんを訪問しBLUEKNITの存在がどんなものになるか探りながら追求してきました。プロジェクト立ち上げには不安がつきものですが、島社長のもとで新たな希望を作ることに挑む皆さんは生き生きとしていて、繊維の未来を模索しながらもニット工場さんのために頑張っていくことに熱い想いがあるチームがBLUEKNITを発展させていきます。これからの衣食住の循環と向き合うことや地域社会に貢献していくことは、島精機製作所さんの未来づくりにも影響し、そこからまた日本の感性が世界を魅了することに期待したいと思います。

手袋の製造機械からホールガーメント編機を開発し、次なる挑戦に向かう

手袋の製造機械からホールガーメント編機を開発し、次なる挑戦に向かう

株式会社島精機製作所本社エントランスホール BLUEKNITプロジェクトチームと

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BLUEKNIT store クリエイティブディレクター 梶原加奈子(かじはらかなこ)

BLUEKNIT storeクリエイティブディレクター

梶原 加奈子

北海道札幌市生まれ。多摩美術大学デザイン学部染織科卒業。

(株)イッセイミヤケテキスタイル企画を経て渡英。英国王立芸術大学院(RCA)ファッション&テキスタイルデザイン修士課程修了。2008年KAJIHARA DESIGN STUDIO INC.を設立。

日本産地の素材を集結させたテキスタイルブランドKANA COLLECTIONを立ち上げ、海外のハイメゾン向けに素材を提案。クリエイティブディレクターとしてもブランディングや地域活性化と連携。札幌の森にショップ、ダイニング、ゲストハウスの複合施設「COQ」を立ち上げ、自然と共に過ごすサーキュラーライフバランスを発信している。

2022年より(株)島精機製作所が立ち上げたサステナブルECモール「BLUEKNIT store」のクリエイティブディレクターを務めている。

北海道札幌市生まれ。多摩美術大学デザイン学部染織科卒業。

(株)イッセイミヤケテキスタイル企画を経て渡英。英国王立芸術大学院(RCA)ファッション&テキスタイルデザイン修士課程修了。2008KAJIHARA DESIGN STUDIO INC.を設立。

日本産地の素材を集結させたテキスタイルブランド KANA COLLECTION を立ち上げ、海外の廃メゾン向けに素材を提案。クリエイティブディレクターとしてもブランディングや地域活性化と連携。札幌の森にショップ、ダイニング、ゲストハウスの複合施設「COQ」を立ち上げ、自然と共に過ごすサーキュラーライフバランスを発信している。

2022年より(株)島精機製作所が立ち上げたサステナブルECモール「BLUEKNIT store」のクリエイティブディレクターを務めている。

PROFILE

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