山形県は古くからのニット産地で、今回訪問しました大江町もニット産地として有名な寒河江市や山辺町に隣接し、ニットが盛んな地域です。60年前にここ大江町で創業した清野メリヤスさんは、現在社長の清野欣也さんと和枝さん夫婦で運営されています。主に編立工場として下請けのお仕事をされていましたが、コロナ禍をきっかけに製品ビジネスに参入され、今回BLUEKNITにご参加いただけることになり、BLUEKNIT storeを運営します島精機製作所(以下、島精機)が工場訪問インタビューをさせていただきました。
後編では清野メリヤスのサステナビリティに関する想いや取組み、ブランドの目指す方向性について語っていただきます。
自宅横の工場前で
山形の自然を想うサステナブルな取組み
【島精機】
BLUEKNITでは国内ニット産業の存続という社会課題解決の一助になればという想いで、ニット工場さんの自社ブランド紹介をさせていただいておりますが、御社自身としてもサステナビリティとして何か意識して取り組まれているような事はございますか。
【清野社長】
自然界に存在する天然素材(綿、麻、絹、獣毛など)を積極的に使うようにしています。また、製造方法でも、最終製品にできるだけ近い形に編成し、最小限の資源利用に留めるようにすることで、SDGsの「つくる責任、使う責任」を意識した活動を心がけ、自然環境にやさしいものづくりを目指しています。
地球温暖化が叫ばれて久しいですが、私が子供のころと比べてこの山形でも明らかに自然環境が変わってしまっています。これ以上の自然破壊を少しでも抑制し、自然環境を維持・改善していくために具体的なアクションの必要性を感じています。わずかな効果かも知れませんが、自社工場の消費電力なども極力抑えるような努力も行っています。
POPUPなどで大人気のベレー帽
【島精機】
ありがとうございます。BLUEKNITでも天然素材を中心に採用してもらっている商品が多く、素材としての再生が比較的やり易くなっています。他の工場さんでも残糸がどうしても出てくるので、それで製品を作ったりしていました。清野メリヤスさんでも残糸なども活用されたりしていますか。
【清野社長】
残糸もそれほど沢山出るわけではありませんが、残ってしまった糸は廃棄せず、ニット小物を1個単位で作って、POPUP等で活用しています。最近は自社企画製品を作った残糸をよく使っています。
製品の一次検品を行う
【島精機】
山形県は直近の人口減少率で全国3位になっており、過疎化が進んでいますが、清野メリヤスさんとしての地元に対する想いなどはございますか。
【清野社長】
私自身、山形のニット業界で育てられましたので、恩返しではないですが、地元の復興に貢献したい気持ちはあります。ふるさと納税ではカシミヤ製品が人気なので、地元の特産品を知ってもらったり、間接的に行政支援ができていたりすることも、たいへん微力ながら地元支援になっていればと思っております。
また、子供が4人いるのですが、商品ビジネスが軌道に乗って、安定した経営ができるようになったら、誰かに事業承継をしてほしいと思っています。地元の産業に従事する若者が増えて、しかもニット産地の復興になれば、一番いいですね。
お客様に喜んでいただくために
【島精機】
自社ブランドビジネスを今後どのように進めて行きたいと思われていますか。
【清野社長】
目標としては、これからもお客様に喜んでもらえる商品、長く使ってもらえる商品を提供していきたいと思っています。POPUP出店では、直接お客様のご要望を聴かせてもらっておりますし、定期開催のイベントでは何度もご購入いただけるファンも増えてきました。また、OEM生産では直接消費者の声を聴くことはできませんが、リピートオーダーの量で、お客様が喜んでいただけているのか分かるので、それがやりがいになっています。
今回BLUEKNITに出品するのはScenery+(シーナリープラス)というブランドで、自然豊かな山形の風景からインスピレーションを得たデザインとし、自然と人間の共生を目指したブランドです。肌触りの良さや使いやすさ、お客様がずっと身にまとっていたい、自然を感じてもらえるような商品をご提供していきます。肌触りの良さを実現するために、ニットの目の粗さ(度目)の最適化や素材の風合いを最大限引き出せる後加工も研究しています。
山形に自生する花をジャガードで表現したストール
基本は夫婦分業だが重労働のセット作業は欣也さん担当
【島精機】
お話を聴いているだけでも、商品のクオリティの高さが想像できます。オンライン販売では商品に直接触れていただく事ができないので、その良さをうまくお伝えするのは難しいですが、BLUEKNITとしても各地でのPOPUP出店などを通じて、品質の良さを体験していただける機会を増やしていきたいと思います。
最上川にかかる橋から見えた虹
取材を終えて
最初、壁にすらりと並んだ研修修了書の数に驚きましたが、これが清野メリヤスさんの無形資産の証明なんだ、と清野社長のお話を聴いていて思いました。長年の経験に裏打ちされた非常に高い技術をお持ちでありながら、インタビューでは終始控えめな態度の清野社長でしたが、地元の商業施設で開催しているPOPUP店などでお客様と直接対話していることをお話いただいたときの嬉しそうなお顔がとても印象的で、「お客様が喜んでもらえる商品をつくりたい」という想いが強く伝わってきました。
清野メリヤスさんにはコンディションの良い編機が多く設備され、訪問時も最終的に高級ブランドの製品となる編地が生産されておりました。素材の良さを引き出す、最善の方法でつくられる商品が、BLUEKNITのラインナップに加わることでScenery+(シーナリープラス)のファンが増えていくことを期待しつつ、これからBLUEKNITで清野メリヤスさんの商品を頑張ってプロモーションしていきたいと思います。