山形県は古くからのニット産地で、今回訪問しました大江町もニット産地として有名な寒河江市や山辺町に隣接し、ニットが盛んな地域です。60年前にここ大江町で創業した清野メリヤスさんは、現在社長の清野欣也さんと和枝さん夫婦で運営されています。主に編立工場として下請けのお仕事をされていましたが、コロナ禍をきっかけに製品ビジネスに参入され、今回BLUEKNITにご参加いただけることになり、BLUEKNIT storeを運営します島精機製作所(以下、島精機)が工場訪問インタビューをさせていただきました。
中編では製品ビジネスに参入した背景や、自社の強みやものづくりへのこだわりを語っていただきます。
最上川にかかる旧最上橋(手前)と新最上橋(奥)
自社企画製品への取組み
【島精機】
現在は自社製品をいくつも生産され、ふるさと納税や地元の商業施設などで大人気と聞いていますが、これはいつ頃から取り組まれるようになったのですか。
【清野社長】
コロナ禍に入った2020年(令和2年)からです。当時、コンビニやドラッグストアからマスクが消え、大変な事になっていました。当時島精機さんが提供していたニットマスクデータを参考に、自社で所有する編機でニットマスクを開発し、近所のコンビニなどに提供を始めました。同業者の中でもニットマスク生産に着手したのは最も早かったこともあり、マスク不足が長期化する中、地元のスーパーやドラッグストアなどで大変喜んでいただきました。
おうえブランド認定品のニットマスク
おうえブランドの認定書:https://www.ooe-shokokai.jp/ooebrand/
【島精機】
SWG-Miniシリーズも導入されていますが、これもマスク生産の為ですか。編み幅が90cmもある機械なので、マスク生産には合わないように思うのですが。
【清野社長】
当時マスク生産に関係する補助金もありましたので、そちらを利用させてもらって導入しました。マスク需要の為に使用するのはもちろんですが、その先ではそれ以外にも様々な用途で使ってみたいという思いもあり、Miniシリーズでは最も編み幅の大きな機械を導入しました。
【島精機】
常に一つ先読みして動かれているという事ですね。マスク需要もいつかは収束するという事も考え、それ以外にも活用しやすい編機に投資しておくという事は、なかなか当時は考えつかなかったと思います。
マスク生産だけでなく、編み幅を活かしてマフラーや帽子も生産
【清野社長】
自社商品ビジネスのきっかけはマスクでしたが、2021年からはホールガーメントのセーターを直接販売するD2C(Direct to Consumer)ビジネスに広げていきました。先日10月1日に会社のホームページがリニューアルし、自社製品の販売ページも作っています。
清野メリヤス様ホームページ:https://seinomeriyasu.com/
ふるさと納税ではカシミヤセーターがよく売れています。
BLUEKNIT storeで販売するマフラー
清野メリヤスの強み
【島精機】
ここまで清野メリヤスさんの60年に渡る歴史をお聞きしてきましたが、清野メリヤスとしての強みやこだわりなどを聴いていきたいと思います。まず、ご自身で誇れる清野メリヤスの強みは何かお聞かせいただけますか。
【清野社長】
先程からのお話の中でもありましたが、ずっと島精機の編機を使ってきた歴史があり、ここに研修修了書が多くあるように技術的な面では自信があります。また、小さい会社ならではの小回りが利くところも、今後D2Cビジネスを展開していく上では、役に立つと思っています。最近近くの商業施設などでPOPUP出店をすることも多く、直接お客様の声を聴いて、商品開発に活かせるのも、大きな財産になっています。
多くの研修修了書
【島精機】
BLUEKNITに参加してくれているニット工場さんからは、BLUEKNITに参加してOEM生産の注文が多くなったというお声を聴いています。OEM生産と自社ブランド販売によるバランスを目指しているのですが、OEMが忙しくなってBLUEKNITで販売する自社ブランド製品の開発時間が取りにくい、という嬉しい悲鳴を聴いております。清野メリヤスさんも小回りが利く、ホールガーメント生産もできるメーカー様という事で、そのようなお問い合わせが増えるかも知れないですね。
【清野社長】
インターシャ対応もできる幅広い機種をそろえているので、幅広いニーズには対応できると思います。リンキング対応も協力会社があるので、ホールガーメントが中心にはなりますが、成型商品対応も可能だと思います。
【島精機】
自社ブランド商品を企画するときは、企画の段階でヒアリングしたりするのでしょうか。また、商品のアイデアはどのように考えられているのでしょうか。
【清野社長】
POPUP出店で商品を見ていただいたお客様から「こんなものを作ってほしい」という声を聴くことも多く、そういった情報を元に商品を検討することはあります。商品化は自分ですぐにできるので、アイデアがあればすぐに現物を作ってしまいます。現物をお客様に見てもらって評価をいただく方が早いので。
アイデアについては、お客様から要望されることもありますし、ひらめきから始まることもあります。
中編では清野メリヤスが編立工場から自社企画商品を出すに至った経緯や自社の強みについてお聞きしました。後編では製品にかける想いや実施しているサステナブル活動などについてお聞きしていきます。