日本遊歩百選にも選ばれた楯山公園の最上川ビューポイント
武者修行で培った技術力
山形県は古くからのニット産地で、今回訪問しました大江町もニット産地として有名な寒河江市や山辺町に隣接し、ニットが盛んな地域です。60年前にここ大江町で創業した清野メリヤスさんは、現在社長の清野欣也さんと和枝さん夫婦で運営されています。主に編立工場として下請けのお仕事をされていましたが、コロナ禍をきっかけに製品ビジネスに参入され、今回BLUEKNITにご参加いただけることになり、BLUEKNIT storeを運営します島精機製作所(以下、島精機)が工場訪問インタビューをさせていただきました。
前編では清野メリヤスさんの創業からのものがたりについて語っていただきます。
家業のニット事業と島精機との出会い
【島精機】
1963年(昭和38年)創業ということをお聞きしていますので、今年でちょうど60年という事ですが、清野社長で2代目になるのですか?
【清野社長】
私で3代目になります。父が清野メリヤスを創業し、1993年(平成5年)までの30年間社長として経営していました。父の他界後、母が社長となり、現在は私が社長になっているので、3代目という事です。
父の時代は手横編機で莫大小(メリヤス)業をスタートし、手横編機に自分でモーターを付けて半自動機として使用していました。島精機さんの編機を使い始めたのは、母が代表として経営していた時代です。
1994年に妻の和枝が清野メリヤスに入社し、私はその2年後に入社しました。ですので、会社では妻の方が先輩です(笑)。
社長の欣也さん
【島精機】
清野社長は1996年(平成8年)に家業の清野メリヤスに入社されるまでは、何をされていたのですか。
【清野社長】
山形のニットメーカーで鈴治株式会社というところに短期間お世話になり、その後株式会社アベニューというテーブルニッター(注:編機は所有せず、ニット生産の仲介を行う会社)に入社しました。この会社で島精機の当時最新鋭であったSESシリーズの編機を導入することになり、私が操作を学ぶため1990年に和歌山で研修を受けました。その後、編機の台数も増えてきたので自社で製品生産まで行うようになり、子会社として分社化したのが株式会社アピールプロダクツの始まりで、そこの責任者となってからも和歌山で何度も研修を受けています。
父の他界後はアピールプロダクツに籍を置きながら、清野メリヤスの手伝いも行うという「二足の草鞋」状態で、大変忙しかったです。
【島精機】
清野社長がすぐに家業を継がなかったのは何か理由があったのでしょうか。
【清野社長】
父親から他社で武者修行してくるように言われましたこともあり、将来清野メリヤスでの事業に活かす経験を積むことを目的に、同じニット関係の仕事を行っている山形の複数の会社にお世話になったという訳です。そこで島精機のプログラミング技術や機械操作を学べたことはその後の事業に役立ちました。
奥様の和枝さんと欣也さん
最新横編機の導入
【島精機】
清野社長が島精機の編機を勉強されたことがきっかけで、清野メリヤスさんとして初めて島精機の横編機を導入されたそうですが、SES122RTという機種を選ばれました。当時はゴム地成型を行える編機はこの機械だけで、世界で初めて4枚ベッドを採用していましたが、流行りのボディコン服の需要が大きかったのでしょうね。
【清野社長】
はい、お立ち台で着てもらうような服を沢山生産していました。ただ、そのブームが去ると通常の編地を編成することが多くなったのですが、逆にこの機種は扱いが難しかったので少し苦労しましたが、私の機械調整技術はその時に培われたのかも知れません。
こまめにメンテナンスを行い、常に編機をベストなコンディションに
【島精機】
すごくポジティブな考え方をしていただけて有難いです。その後、2001年にホールガーメント編機を導入されたということですが、これはどういった経緯だったのでしょうか。
【清野社長】
まだSWG-Xというホールガーメント機もリリースされたばかりだったのですが、取引関係のあったセイノコーポレーションさんが既に2台導入しており、3台目納入時に一緒に導入することを提案されたことがきっかけです。セイノコーポレーションさんが追加で1台、当社が1台入れました。
【島精機】
無縫製技術自体がまだ浸透していない時代でしたので、いろいろ苦労されたのではないですか。
【清野社長】
そうですね。でもSES122RTで4枚ベッド機の機械調整などをしっかり学んでいたので、何とか問題なく製品生産もできました。当時所有していた柄組み機(編機の制御プログラムを作成するコンピュータ)ではSWG-Xのデータを作れなかったので、リリースされたばかりのSDS-ONEシリーズを導入しました。納入されたのは何と初号機で、運ばれてきたトラックには日本酒の樽が載ってました。(注:島精機では初号機の出荷時に樽酒をプレゼントしています。)
デザインシステムを使ってホールガーメント製品の生産データを作成
前編では清野メリヤスさんの歴史についてお話をお聞きしました。中編では製品ビジネスに参入したきっかけやものづくりへのこだわりなどをお聞きします。