ニットウェアのリサイクルについて

1.リサイクルの種類(ポストコンシューマ製品)

1.リサイクルの種類(ポストコンシューマ製品)

環境負荷できるだけ小さくするには、まず「リデュース」で製品を作りすぎないことが最も重要です。

次に使用しなくなった服を「リユース」し、製品としての使用期間を長くする事。

その次に3つのリサイクルが来ますが、「サーマルリサイクル」とは焼却した際に熱エネルギーを再利用する事なので、原料自体を再利用するという意味では「マテリアルリサイクル」と「ケミカルリサイクル」の2つになります。

「ケミカルリサイクル」は化学的な処理を行うことで元の原料に近いレベルに戻すリサイクル技術。

「マテリアルリサイクル」とは素材の形状を変える事で、素材としてのリサイクルを行うもの。繊維(綿)状態に戻す反毛という処理が最も一般的。

上の図で「処分」としているのは、埋め立てや熱回収を行わない焼却処理で、最も環境負荷が大きいとされています。

2.日本の衣料品リサイクル事情

衣料品は一般的に販売が開始される1年以上前に企画がスタートし、生産は半年以上前に始まり、最近は予約販売や期中発注も増えてきましたが、依然として売残りが多く発生するビジネスモデルが前提となっています。必要な量以上に作らない事が最も重要ですが、作ってしまったものをどう循環させていくかも、現実的な手段として考えていく必要があります。

衣類のマテリアルフロー サマリー

以前の読みものでもご紹介しましたが、日本の衣料品の状況として、リサイクル14%、リユース20%、焼却、埋め立てが66%と報告されています。地球環境を考えると、原料再利用できていない66%をどうリサイクルするかが大きな課題となっています。

リユースについてはオークションアプリなどによる個人間取引や中古衣料買取り・販売を行う二次流通業者も増加傾向にあります。国内でリセールされるだけでなく、東南アジアや南米、アフリカなど海外にも中古衣料品が大量に輸出され現地で再販されています。

衣料品のリサイクルの大部分はマテリアルリサイクルの反毛処理を行い、フェルトや不織布にして自動車のインシュレーションや建築資材の断熱材などに使用されています。また、ウールや綿の純度の高い製品の一部は糸にリサイクルされ衣料品に循環されているものもあります。昔から高級な素材であるウールのリサイクルでは国内でも100年以上の歴史があると言われています。合成繊維のマテリアルリサイクルは熱融解してペレット状に戻し、繊維製品や射出成型でプラスティック製品に再生されています。マテリアルリサイクルのメリットとしては、あまりコストやエネルギーを要しない事で、デメリットとしては再生前の素材の色がそのまま残ってしまう事があります。

衣料品リサイクル

衣料品リサイクル

現在、衣料品の約50%はポリエステル原料であると言われていますので、ケミカルリサイクルによる素材循環は非常に期待される技術ではあるものの、かなり大規模な設備で大量に処理しないと採算が合わないとも言われており、現在複数の会社で、より効率的な処理技術の研究が進んでいるようです。綿製品をセルロースにリサイクルする技術もいくつかの国からスタートアップ企業が出てきているので、こちらもコストが合うようになることが期待されています。

3.リサイクルしやすい横編みニットウェア

具体的なデータはありませんが、実際に反毛処理をされている方に聞くと、綿に戻すために反毛処理された繊維が全て再生される訳ではなく、素材によっては固く、密度が高いために反毛が難しいものやリサイクル率が低いものもあるそうです。また、附属品が多いアウターや縫製部分が多いスーツなども反毛に手間がかかるようです。

それらと比較すると、横編みニットウェアは下記の理由で、リサイクルしやすい衣料品であると言えそうです。

  • 目が粗いので反毛で繊維長が長く残る(ほどけやすい)
  • ファスナーなど附属品が少ないので切り取る手間が不要
  • ウールやカシミヤなど価値が高い素材が多い(リサイクルコストを吸収できる)
  • 単一色の製品が多い

反毛から糸に戻し、ニットウェアに生まれ変わる取組みはThe Hong Kong Research Institute of Textiles and Apparel Limited (“HKRITA”)NovetexH&M Foundationにより実証システムが2018年につくられました。香港のThe Millsという施設にあるGarment to Garment (G2G)コンテナに収まったシステムには島精機製作所のホールガーメント横編機が組み込まれています。

hkrita.com:Garment-to-Garment (G2G) Recycle System

Garment to Garment (G2G)

Garment to Garment (G2G)

Garment to Garment (G2G)

また、これと同じシステムのコンテナがスウェーデンのH&M店舗に設置されています。

H&M JAPAN:H&M、リサイクルシステム「LOOOP」で不要な衣類を新たなファッションアイテムに変換

4.今後の課題

欧州では資源リサイクルについて法的に義務化されていることもあり、今年6月にミラノで開催されたITMA展でも、多くの衣料品リサイクル機器メーカーが大型の機械を出品していました。これらの多くは、反毛で衣料品を綿に戻した後、フェルトや不織布に加工するもので、自動車の内装材や建物の断熱材などに使用されています。

ミラノで開催されたITMA展の様子

ミラノで開催されたITMA展の様子

国内の自動車生産が減少し、海外へのリユース輸出も減少傾向であると言われており、消費者のリサイクル意識の高まりで回収量が増えてくると、日本国内で発生した古着の国内リサイクル処理の必要性は増してくると考えられますが、現状国内でリサイクルされた衣料品は手選別で種類や素材、色で分けられています。将来これらの作業がRFID技術の活用などで自動化することが必要となります。

海外ではまだ完全ではないのかも知れませんが、すでに色や素材による自動選別を行うシステムも運用されているようです。

IVL スウェーデン環境研究所による素材選別システム

ITMA2023でVALVAN社(ベルギー)が展示していたFibersortシステム

ITMA2023でVALVAN社ベルギー)展示していたFibersortシステム

一般消費者の環境意識が高まり、衣料品のリサイクル率が上がってきても、複数の素材が使われている場合にはそれを効率的に繊維に再生する方法・技術が確立していません。現状ではできるだけ単一素材を使った製品を作ることが資源再利用の面では効率的です。また、リサイクルにかかるコストを誰が負担するのか、リサイクルされた素材がバージン素材より劣っていても、消費者はそちらを選ぶのか、など課題は山積しています。

BLUEKNIT store で販売している製品も現状すべてが単一素材でつくられている訳ではありません。それでも、カシミヤ・ウール混率が80%以上の製品は再度糸に戻せるように処理します。その他の合成素材でつくられた製品については反毛による不織布になるケースが多くなりますが、全てリサイクルしますので、是非BLUEKNIT買戻しシステムをご利用ください。

BLUEKNIT へのお問い合わせはこちらよりご連絡くださいませ。

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