1.サーキュラーエコノミーとは
サーキュラーエコノミーは、日本語で「循環型経済」や「循環経済」と呼ばれていますが、最近はサーキュラーエコノミーという言葉自体をよく見かけるようになりました。元々はEUにより2015年12月に公表した政策パッケージに盛り込まれていたもので、資源⇒製品⇒使用⇒廃棄という直線経済(リニアエコノミー)とは対照的に、資源を最大限効率的に利用し、可能な限り再利用することで廃棄物の発生を抑える取組みのことです。
2010年にイギリスで設立されたエレン・マッカーサー財団は、サーキュラーエコノミーを推進している組織で、次の3つの原則に基づいて進められています。
- 1.Eliminate waste and pollution
- 廃棄物と汚染をなくす
- 2.Circulate products and materials (at their highest value)
- 製品や素材を(最も価値の高い状態で)循環させる
- 3.Regenerate nature
- 自然を再生する
これら3原則を具体的に分かり易く図解したのが有名な下記のバタフライ・ダイヤグラムです。
環境省が発表した資料(https://www.env.go.jp/policy/sustainable_fashion/)では使用後の服の行き先が下記の様に報告されています。これによると約34%が循環され、残りの約66%が焼却あるいは埋立処理されています。
環境省「サステナブルファッションの推進に関するWebサイト」より引用
繊維製品の場合、再生された原料の価値が相対的に低く、再生原料を使用した商品の品質が必ずしもバージン原料を使用した商品と比較して高くないため、回収や再生のコストをだれが負担するのかという課題に直面します。現在は行政による回収割合がほとんどですが、百貨店やブランドが独自に自社店舗などで回収する取組みが増加中のようです。各社の取組み詳細については、2022年10月3日発行のWWD JAPANにまとめて紹介されていましたので、ご参照いただければと思います。
2.循環・再生を見越したものづくり
<原料選び>
BLUEKNIT storeではニットファクトリー様と使用する素材やデザインについても事前に協議して商品企画を行っており、環境負荷が小さく、再資源化しやすい素材を選定してもらっています。またニット製品は他の繊維製品と比較して柔らかく、目の粗い生地が多いので、反毛処理で回収できる繊維の繊維長が比較的長く、昔から毛七(リサイクルウール率70%)などに再生されています。出来るだけ再生原料として価値が付きやすい素材を最初から選ぶことで、再生品の再流通率を上げていきます。
<製造工程での省資源化>
商品の製造工程においても素材の無駄をほとんど出さないホールガーメント®や成型編みの技術を用いています。
ホールガーメント®とサーキュラーエコノミーの親和性は高く、H&Mでもニット製品のリサイクリングシステムに利用されています。(参考記事はこちら)
<買戻し、リセール>
島精機が買戻した商品は品質管理担当がリセール可能かを判断し、値付けを行ってBLUEKNIT store内でリセールする予定としています。現在商品買取り準備を進めており、年内には買戻しを開始します。
<リサイクル>
リセールできない品質の商品はマテリアルリサイクルを行います。現在は東谷商店様と循環リサイクルパートナー契約を締結し協業しており、その先の素材による再生プロセスについても島精機として直接確認した上で進めています。
3.販売した商品の100%買戻しを目指す
BLUEKNIT storeはオンライン販売だけなので、店頭回収ができません。それでも販売した商品は100%回収してリユースやリサイクルに利用するために有償での買戻しを採用しています。返送する送料についても、島精機が500円を負担する仕組みとしていますので、小さ目のボックスを選んでいただくと送料のご負担もなく返送が可能です。現在は便利な返品サービスがありますが、大手ECモールやアパレルECサービスを対象としたサービスで、将来的に小規模での回収利用でも利用しやすい条件になることを期待しています。
買戻し額は使用期間に応じて係数を設定しており、商品をしっかりご使用いただいた後での買戻しを想定しているので、購入時から2~3年後の買戻し額が最も高くなり、最高で購入金額の15%に相当する金額をポイントとして還元しています。商品を使い続けることが環境目線ではよりサステナブルですが、ニットファクトリー様や衰退しつつある国内産地目線では、定期的な買い替えを促すことで地域経済を回していく必要があります。
また、100%の買戻しを目指すために、二次流通やネットオークション、フリマアプリなどを経由した商品でも、BLUEKNITタグの確認ができた商品は買戻します。最終的に島精機が買戻しを保証していることから、個人間取引でも価値が付きやすく、リユース循環される回数が増えることを期待しています。
4.カーボンフットプリントの最小化に挑戦
<在庫について>
その他の廃棄ゼロを目指す取組みとしては、販売方法の工夫により売残りを作らないようにしています。在庫はニットファクトリー様自身でお持ちいただくので、中間在庫が全くありません。また、横編みニットの特徴として糸さえあれば、小ロット生産が短期間に行えるので、多くの在庫を持っておく必要がありません。今後、予約販売などを増やしていくことで、工場在庫も無くしていく計画です。
<カーボンフットプリント最小化>
国内生産の素材採用が多く、無駄の少ない製造プロセスで在庫を持たず、販売した商品は100%リユースかリサイクルするという商品バリューチェーンなので、現在はそのGHG(温室効果ガス)排出量の数値化ができておりませんが、非常に少ないことは想像してもらえるかと思います。
5.最後に
衣料品廃棄の問題では、回収やリサイクルの割合にフォーカスされがちですが、リサイクルされた素材を使った商品がもっと流通しなければ全体の循環が回って行かないことも事実で、今後サーキュラーエコノミーが進んでいく中でボトルネックになる部分が出てくると思われます。BLUEKNITの取り組みではある程度限定された素材や商品群の中で上手くサーキュラーエコノミーが回せるのか、継続してチャレンジしていく予定です。